
メジャー2年目の今季、ブルージェイズの地元トロントで「ムネリンフィーバー」を巻き起こした川崎宗則。シーズンが終わり帰国後もムネリン人気は止まるところを知らず、ついにはトロントの女性レポーターから“公開ラブレター”を受け取った。
(中略)
◆「親愛なるムネノリへ」(日本語訳)
子供の頃、私は毎日ブルージェイズの試合を見ていました。ベースボールというスポーツをよく知らなかった私は「一緒に遊びに出掛けたくなるような、素敵で面白い選手」を基準に、お気に入りの選手をいつも探していました。
ムネ、あなたこそは、まさに私が探し求めていた人です。そして今、あなたがチームを去るかもしれないと聞きました。
私たちはまだ1シーズンしか共に過ごしていないけれど、それは私たちがあなたの虜になるには充分な時間だったし、まだお別れをする準備なんてできていません。
オールスター級の選手がひしめくブルージェイズにおいて、非力なマイナーリーガーとしてチームに加入したあなたがチームに多大な貢献をもたらすとは、誰も期待していませんでした。
しかしあなたは、トロントの注目を一身に集め、そしてファンの心を掴みました。
金曜日(11月1日)、その心が打ち砕かれました。ブルージェイズは100万ドル(約9,800万円)の契約オプションを破棄し、あなたをフリーエージェントにしました。あなたは、より安い契約でチームに戻ってくるのか、それとも他のチームに行くのか、あるいは日本に戻ってしまうのでしょうか?
私は、あなたにお別れを言うためでなく、お願いをするためにこの手紙を書いています。ムネ、トロントに残って!
お金のためではなく、私たちのために。幸せはお金で買えないと、皆が言うでしょう?
あなたは、バックアップ要員としてスプリングトレーニング中に契約した、32歳のショートストップにすぎませんでした。大型契約で加入したスター選手たちとは、全く立場が違いました。
それでもあなたは、残念な結果に終わったブルージェイズのシーズンにおいて、希望の光となりました。あなたのベースボールに対する情熱、姿勢、そして周囲の人間をも動かす愛を否定する人は誰もいません。
あなたは英会話帳を持ち歩きカメラの前でも躍動し、そしてダグアウトからチーム最高のチアリーダーになりました。何もかもが上手くいかなかったチームにおいて、あなたこそが私たちが応援すべき人になりました。
あなたがマイナーに降格したとき私たちは絶望しましたが、その2日後にあなたはすぐ戻ってきたので、私たちの悲しみは長くは続きませんでした。
でも今回は、私たちはどれほど長い時間、悲しみに暮れなければいけないのでしょう?
あなたが打席で苦しんでいるとき、私たちも皆苦しんでいました。24打点、打率.229という平凡な成績だったからこそ、あなたが結果を残したとき私たちは無条件で喜びました。あなたがボルティモア・オリオールズ戦でホームランを打ったとき、私たちがあなたの名前をチャント(合唱)したのを覚えていますか?
金曜日、ツイッターでは悲鳴と悟りの声が上がっていました。
「勝利のためには、チームのためにプレーできる選手が必要だ。彼はここ数年で最高のチームプレイヤーなんだ」
「カワサキ!ノー、ダメだ!行かないでおくれ!」
「OK、わかった。幸運を祈るよ、バディー」
来年のあなたに私が望む唯一のことは……ブルージェイズに戻ってきてくれること、それだけです。
ムネ、あなたは何て言うかしら?ファンのために、残ってくれるかしら?
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